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【第1部】 第10話 繋いだ手①

last update 최신 업데이트: 2025-06-17 17:01:45

 下校の時間、私はヘンリーと一緒に学校を出た。

 貴子はいつも通り、校門前に止まっている迎えの車に乗り込み、帰っていく。

 さすがお嬢様、何か特別なことがない限り毎日車での登下校だ。

 車の窓から私たちに手を振る貴子を見送ったあと、私たちは歩き出す。

 門を出て、もう少し歩けば、龍が待っている路地に到着する。

 それにしても……と私は思いふける。

 教室から出る時の、あの女子の痛い視線が忘れられない。

 まあ、気にしていてもはじまらないか……。これから毎日なのだから。

 私はふっと息をついて、ヘンリーへ視線を送った。

 ヘンリーは学校がとても楽しかったようで、ご機嫌な様子で私の隣を歩く。

 私が思い悩む必要なんてどこにもなかった。

 ヘンリーは、きっと一人でもこの世界でやっていけることだろう。

 私と違って、人の懐に入り込むのが上手だ。いや、天然の人たらしか。

 どうやら、はじめに感じた私と似ているという感覚は、勘違いだったようだ。

 どこか他人と違う自分。

 他人と自分の間に線を引き、勝手に寂しく感じてしまう。

 そんな孤独を分かち合える人かも、なんてヘンリーのことを思ってしまっていた。

「流華? 元気ない? どうしたの?」

 黙り込む私が気になったのか、ヘンリーが顔を覗き込んできた。

 いきなり綺麗な顔がドアップになり、驚いた私は後ろへ退き間合いを取った。

「大丈夫、ちょっと考えごと」

 私は気持ちを読まれたくなくて、顔と視線を背けてしまう。

「そう? ……はい」

 なぜかヘンリーは私に手を差し出してきた。

「な、何?」

「流華と手を繋いで歩きたい」

 ヘンリーの笑顔と共に、まっすぐな瞳が私に向けられる。

 視線が交わったその瞬間、突然頭に痛みが走った。

 脳裏に映像が流れていく。

 私は誰かと手を繋いでいる。

 相手は、またあの金髪の君……顔ははっきりと見えない。

 しかし、すごく幸せな気持ちに満たされていることだけはわかった。

 映像はその一瞬だけで終わってしまった。

「どうしたの?」

 ぼーっとしている私に、心配そうな顔をしたヘンリーが優しく声をかけくる。

 私は気持ちを切り替え、微笑み返した。

「ううん……大丈夫」

 どこか、まだ夢見心地の気分から現実に戻されていく。

 私は自然にヘンリーの手を取っていた。

 ヘンリーは嬉しそうに満面の笑みを向け、私の手をしっかりと握り返してくれる。

 なんでだろう、手を繋ぐのは初めてのはずなのに……懐かしいと思ってしまう。

 私は不思議な感覚に驚きつつ、ヘンリーを見つめた。

 こんな風に誰かと手を繋いで歩いたのなんて、何年ぶりだろう。

 そういえば、あのとき以来だろうか。

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